1. 金融機関等向けエクスポージャーとは?
IRB方式において、「金融機関等向けエクスポージャー」は、銀行・証券会社・保険会社といった規制対象金融機関のみならず、ヘッジファンドやノンバンク等の非規制金融機関すべてを含むアセットクラスです。
2. 大規模規制金融機関等の定義
- 総資産1,000億ドル以上の規制金融機関
- すべての非規制金融機関
- 判定は連結ベースの総資産で行い、該当機関の子会社もすべて対象となります。
この定義により、大規模規制金融機関等には資産相関係数の補正など特別ルールが適用されます。
3. FIRBの義務適用と資産相関係数補正
■ FIRBの義務適用
- 金融機関等への与信には、すべてFIRB方式の適用が義務付け
- AIRB方式は金融機関等に適用不可です。
■ 資産相関係数の補正
- 大規模規制金融機関等に対する与信では、RW計算に使用する資産相関係数を1.25倍に補正
- 金融機関間の信用相関が高いことに起因する制度上の措置です。
4. モデル構築上の特徴
- 財務報告や取引形態が業界標準的に類似し、PD推計の一貫性が高い
- しかし、信用デリバティブやインターバンク取引など、複雑な相関リスクの反映が必要
- 特に大規模機関では、信用リスク伝播やマクロ感応シナリオの分析装置が求められます
5. 実務対応と内部管理上の留意点
リスク | 対応策 |
---|---|
分類誤り | 総資産基準による大規模金融機関等の判定の厳格化 |
モデル運用の整合性 | FIRBの使用範囲や相関係数補正を制度規定として整備 |
モニタリング体制 | 定期的な信用格付、モデル精度診断、ストレステストの実施 |
報告と内部統制 | Output Floorおよび資本補正ルールを内部報告体制に組み込む |
✅ まとめ
金融機関等向けエクスポージャーは、IRB制度の中で最も厳格かつ専門性の高いカテゴリです。
FIRB義務適用、資産相関補正、Output Floor対応といった制度要件を踏まえ、信頼性の高いモデル構築と内部統制の体制整備が不可欠です。