1. 証券化取引の定義(金融庁告示第1条第2号)
金融庁告示では、証券化取引を次のように定義しています。
二 証券化取引
原資産に係る信用リスクを優先劣後構造の関係にある二以上のエクスポージャーに階層化し、その一部又は全部を第三者に移転する性質を有する取引をいう。
ただし、特定貸付債権、第六十五条の二第一項に規定する特定貸付債権向けエクスポージャー、第七十条第一項に規定する事業用不動産関連エクスポージャー及び第七十条の三に規定するADC向けエクスポージャーに該当するものを除く。
金融庁の告示Q&Aでは、この定義の根幹となる要素として以下の2点が示されています。
- ノンリコース性(原資産から発生するキャッシュフローのみで返済が行われる仕組み)
- 優先劣後構造(元利金支払や損失負担が順位付けされている構造)
2. 証券化の概要
証券化(Securitization)とは、ローンやリース債権などの資産プールを裏付けに証券を発行し、そのキャッシュフローを投資家に分配する仕組みです。
資産は通常、SPC(特別目的会社) に移転され、元の債権者(オリジネーター)とは切り離されます。
銀行は証券化取引において、主に次の立場を取ります。
- オリジネーター(資産を証券化して投資家に販売)
- 投資家(証券化商品を購入・保有)
- スポンサー/アレンジャー(顧客の資産を証券化し販売する)
3. 日本の証券化における計算手法
バーゼル規制では、証券化エクスポージャーのリスク加重資産(RWA)は、以下の順序で適用可能な方式を選択します。
優先順位 | 計算方式 | 概要 |
---|---|---|
① | SEC-IRBA(内部格付アプローチ) | IRB方式のPD・LGD・EADを用い、証券化特有の計算式に代入 |
② | SEC-ERBA(外部格付アプローチ) | 公的格付を参照しRWを決定 |
③ | SEC-SA(標準的アプローチ) | 格付や十分なデータがない場合に適用 |
4. 実務における適用傾向
- スポンサーとして顧客の資産を購入する場合は中身を把握できるためSEC-IRBA適用が多い
- 投資家として参加する場合は、入手可能な情報や格付の有無に応じてSEC-ERBAまたはSEC-SAを選択
5. SEC-IRBAの特徴
SEC-IRBAでは、通常のIRBパラメータに加え、以下の要素を考慮します。
- 劣後トランシェの厚み
- 残存期間
- プール資産の相関推計
- 元の資産のPD・LGDによるキャッシュフロー予測
これにより、上位トランシェほど低RW、劣後トランシェほど高RW となります。
6. 実務上の留意点
- 再証券化では厳格なRWルールが適用
- 必要データが揃わない場合はRWが極端に高くなる可能性