1. CCP向けエクスポージャーとは?
中央清算機関(CCP)は、デリバティブ取引や債券貸借を清算する機関であり、取引当事者間に立って契約履行を保証します。
銀行にとってCCP向けエクスポージャーは大きく以下の二つに分類されます:
- トレードエクスポージャー(取引に伴う信用リスク)
- 清算基金拠出分(Default Fund Contributions)
2. 「適格CCP(QCCP)」の条件
金融庁告示において、「適格CCP」は銀行がリスク・センシティブ手法で信用リスクを算出するために、必要な情報を提供するCCPであり、以下のカテゴリに該当する機関とされています:
- 「金融商品取引法」または「商品先物取引法」に規定される清算機関
- 外国の適切な規制・監督の下で運営されている同様の清算機関
さらに、金融庁Q&Aにおいては、以下の点が補足的に示されています:
- バーゼル銀行監督委員会の統一フォーマットに基づくリスク・センシティブな計算結果がCCPから銀行へ提供されること
- この情報提供体制があることが、適格CCP認定における重要な基盤である
3. RW計算の基本ルール(QCCPと非適格CCP)
(1) 取引エクスポージャー
- QCCP:原則 2%RW
- 非適格CCP:通常のカウンターパーティリスクとして評価
(2) 清算基金拠出分(Default Fund)
- QCCP:リスク・センシティブ手法に基づき評価(最大で1,250%RW)
- 非適格CCP:一律 1,250% が適用される
4. 間接参加の場合の取扱い
銀行が間接清算参加者としてCCPに接続する場合、RWは以下のように区分されます。
(1) RW = 2%(優遇適用)
以下の イ および ロ の双方を満たす場合、当該間接清算参加者のトレード・エクスポージャーは 2%RW とされます。
- イ 間接清算参加者の損失防止措置
- (1)直接清算参加者が債務不履行または支払不能となった場合
- (2)他の間接清算参加者が債務不履行または支払不能となった場合
→ これらのケースで損失が発生しないように、CCPまたは直接清算参加者が方策を講じていること
- ロ 乗り換え枠組みの存在
- 間接清算参加者が委託先の直接清算参加者の倒産・失格に直面しても、追加的な負担を負うことなく、他の清算会員またはCCPと契約を継続・承継できる仕組みが存在すること
(2) RW = 4%
上記の条件を満たさず、直接清算参加者及び他の間接清算参加者がともにデフォルトした場合に損失が発生し得る場合は、当該直接清算参加者向けトレード・エクスポージャーに対し 4%RW を適用する。
(3) RW:通常のカウンターパーティリスク
上記の措置がさらに不十分で、倒産隔離や承継の仕組みが存在せず、実質的に清算会員の信用リスクを直接負う場合には、通常のカウンターパーティリスクとして評価される。
5. 実務上の留意点
- 適格CCPの特定:金融庁や監督当局の認定リストに基づいて判断すべきです
- 担保・清算基金の見直し:清算基金などの自己資本計算への影響を精緻に評価
- ストレステストの実施:CCPのフォールト時に必要な資金負担などを含めた評価が望まれる
6. まとめ
- 適格CCP向け取引は原則2%RWで評価されるが、間接参加の場合は契約条件次第でRWが2%・4%・通常のカウンターパーティリスクと分かれる
- 2%RWを適用するには、損失回避措置と契約承継枠組みの両方を満たすことが必須
- 実務では、各清算会員経由の接続条件を比較し、規制上のRW優遇を確実に享受できる契約を選ぶことが重要