1. 株式エクスポージャーとは何か?
株式エクスポージャー(Equity Exposures)は、IRB方式における特定のアセットクラスとして独立に定義されており、株式またはそれと同等のリスク特性を有する金融商品を広く対象とします。
金融庁告示第1条第9項による定義は以下のとおりです:
【告示上の定義:第1条第9項】
株式エクスポージャーとは、次のいずれかに該当するものをいいます。
- イ:株式または以下3要件を満たす持分性商品
(1)償還されない
(2)発行体の債務でない
(3)残余財産分配請求権または剰余金配当請求権を有する - ロ:Tier1資本またはコア資本と同様の性質を有する金融商品
- ハ:債務性であるが以下の特性のいずれかを有する金融商品
(例)支払繰延条項や株式等による支払義務の条件等 - ニ:株式の収益に連動する仕組債等、実質的に株式と同等のリスクを有する商品
これにより、形式上は債券であっても、実質的に株式と同等のリスクを有する金融商品はすべて対象とされます。
2. 株式エクスポージャーの評価方法(RW計算)
従来のIRB方式では、PD/LGDによるアプローチやスロッティング方式が認められていましたが、バーゼルⅢ最終化により大幅に簡素化・標準化されました。
❗ 現行制度下ではSA(標準的手法)が義務付けられる
すなわち、IRB方式を採用している銀行であっても、株式についてはRWを固定化したSAを強制的に適用することとなりました。
【RW水準】
区分 | リスクウェイト(RW) |
---|---|
上場株式・非上場株式等 | 250% |
投機的な非上場株式等 | 400% |
- 「投機的」とは、主に短期的な売買による譲渡益を期待した投資など、価格変動性が高く予測困難な資産を指します。
- 上場株式はすべて250%、非上場株についてはリスクの性質に基づいて区分される点に注意が必要です。
3. 実務上の位置づけと留意点
株式エクスポージャーは、バーゼルⅢ最終化において次のような観点から資本戦略上の重要性が増しています:
観点 | 解説 |
---|---|
RWの一律化 | 内部モデルでの資本最適化ができないため、保有インセンティブが低下 |
政策保有株の整理圧力 | 銀行のRWA増加圧力から、保有方針の見直しが進行中 |
Output Floor影響は軽微 | もともと高RWであるため、Floorによる加算余地は小さい |
✅ まとめ
株式エクスポージャーは、IRB方式下においても独自の規制体系が適用され、SA(固定RW)が義務付けられている特殊なアセットクラスです。
- 告示上の定義は「形式」よりも「実質」を重視
- RWは250%または400%に固定化
- 内部モデルやIRB計算式は適用不可