ソブリン向けエクスポージャーのIRB制度上の定義と実務対応

IRB方式におけるソブリン向けエクスポージャーは、自己資本比率告示により明確に定義されており、中央政府や中央銀行に加え、地方公共団体、政府関係機関、国際機関等が分類対象です。
分類基準を誤ると、リスクウェイトの過小評価やモデル違反リスクが生じるため、法令に基づく正確な判断と文書管理が不可欠です。


1. 自己資本比率告示 第一条第三十六号に基づく分類

以下の記号と対象に基づき、ソブリン向けエクスポージャーが制度的に定義されています:

記号対象内容
中央政府および中央銀行日本および外国の中央政府・中央銀行
地方公共団体日本国内の都道府県、市区町村等
地方公共団体金融機構地方債発行支援を行う旧地方債協会(地方公共団体金融機構)等
政府に準ずる法人第六十一条の要件を満たす政府出資・統制法人(詳細は次項)
政府系三公社土地開発公社、地方住宅供給公社、地方道路公社
外国の公共部門外国の地方政府や公的機関(例:米国州政府)
国際的開発金融機関IBRD(世界銀行)、IFC、IDA、MIGAなど
超国家的国際機関BIS、IMF、ECB、EUなどの超国家機関
信用保証協会信用保証協会法に基づく法人等(中小企業支援制度等)

2. 「ニ」号に基づく政府関係機関(第六十一条)

自己資本比率告示第六十一条により、以下の要件を満たす法人が「ニ」に該当します:

  1. 政府が過半を出資する法人(株式会社を除く)
  2. 政府出資法人(株式会社を除く)で、予算・決算が国会または主務大臣の承認対象
  3. 政府が過半を出資する株式会社で、予算に国会の議決、決算報告書を国会提出する義務あり
  4. 政府が過半を出資し、債券または借入金の償還計画について主務大臣の認可を要する法人

✅ これらの法人に対してソブリン向け分類を行うには、法令上の裏付けと社内判定記録の整備が必要不可欠です。


3. IRB方式におけるパラメータとRWの扱い

要素内容
PDIRB方式では原則内部推計。ソブリンにはPDの下限が設定されておらず、理論上PD=0%が許容される
LGD/EADFIRBでは当局指定値を使用。AIRBでは内部推計可能
RWRW=0%とするには、PD=0%というモデル出力に基づく明示的な根拠が必要。格付ベースのRWとは構造が異なる

✅ 実務上の注意点

  • 分類の誤りはRWA過小計上の原因となり、監督指導やモデル使用停止のリスクにつながる
  • 海外政府・公的機関への与信は、信用補完の有無・法的位置付けの確認が不可欠
  • 分類根拠の社内文書化、外部レビュー、モデル入力との整合性確保が必要

✅ まとめ

ソブリン向けエクスポージャーは、分類基準が法令で明確に定められている一方で、誤分類や根拠不備が重大なリスクとなる制度上の重要領域です。
IRB制度の正確な運用と自己資本比率の信頼性維持のためには、告示準拠の内部ルール整備とPDモデルとの整合性管理が必須です。

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